2019年9月2日月曜日

小舟/坂本慎太郎


発売前にMVが発表され聞いた。(その後7inchも届いた)

こんなに平易な言葉で今を射ぬける人は他にいない。


この国が悪くなっていくような感触を誰でも持っていると思う。
希望は持っていたいが閉塞感に抗えず、憂国モードにハマることも少なくない。
この夏はあいちトリエンナーレのことや日韓関係悪化もあって
昭和史、戦史の本を読み漁った。


そんな夏の終わりにこの曲を聞いて、
こんなアウトプットこそがアーティストの役割だった、とハッとした。

正攻法ではなく、思いもよらない視座で
様々なベクトルの気持ちを包めることが
詩や音楽であり、そういうことを忘れていた。
そして悶々とする気持ちを形にして
もらったことで安心するような気持ちにもなった。

この曲のモチーフになっている
悪化に対する傍観、または
ひっそりとした逃避は
特定のニュースに紐づくものではないけれど
聞く人がそれぞれ「完全に今だ(または少し近未来)」
と思えるほど広く皆の気持ちを
掬えているのではないか。

今のことを歌って生々しくならないのは、
未来から見た昔(=今)に向かって
語りかける仕組み※と
音のトーン(フョ〜ンという霊魂音)のせいか。
(※その発明のような今について語る構造は「ナマで踊ろう」以来だ)


「小舟」は未来から今への手紙だが、
B面の「未来の人へ」はその逆方向(今→未来)であり、
返信のように対になっている。

曲のスローさとギターソロには
カバーしたコーネリアス
「あなたがいるなら」とのつながりも思った。


確か99年頃、小山田氏がゆらゆら帝国の「3×3×3」
を推していて驚いた記憶がある。
異なるフィールドの表現者に思えた
両氏の音楽がこんな形で接近していることは、
両方ファンだった者としてはうれしい。

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